★「痛み」の捉え方

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患者さんが表現する「痛み」には様々な種類、感じ方があります。それらを単一的な判断で診ることはできません。状況や状態によってベストだと思える選択肢を選びましょう。

Linkageにおける痛みの捉え方

炎症性

急性炎症 外傷5種や病的な急性炎症
慢性炎症 持続的な熱エネルギーの蓄積。慢性腰痛症を代表とする慢性症状の一つ。
当院における炎症 関節内および組織間の摩擦による熱エネルギーの蓄積によって起きる炎症反応

 

筋肉・疲労性

一時的なもの。

ポイントは患者さんが不安か否か。

 

膨張系

天気が悪くなることによる気圧変動や浮腫み、非炎症性の腫れなど。

骨膜、筋膜、腱膜、皮膚の膜状構造物は伸長率に一定の許容量を持ちますが、許容量を超える影響力には痛みを引き起こします。

ポイントは『非荷重な状態』であること。どんな動き、運動療法をしていけば改善するかを考える。

捻挫、牽引応力もこれに近い。

 

脳脊髄液

低脊髄液減少症や髄液漏出症を総称として、脳脊髄液減少症と言います。

脳脊髄は脳脊髄液の中で浮いているような状態です。液体は重力下におけるバランサー機能を持っており、血管内のように一定の圧力を保っている。

気圧変動による脳脊髄への影響は密閉空間の中の液体に影響される。脳脊髄液が還流するメカニズムは、仙骨うなずき運動(仙骨揚水ポンプ)をもってして行われ、その還流にって生まれる流圧、熱エネルギーの運搬が脳脊髄を新鮮な状態に保つ。

つまり、尾骨圧迫による仙骨揚水ポンプの機能低下といった座る環境の問題を主因として、液体実質量が減少すれば、水圧維持が成されず頚部痛や頭痛、めまいなど諸症状が出現します。

 

内科的な痛み

 

内臓体表反射など、内臓からの関連痛の分布領域もありますので、ざっくりと覚えておきましょう。痛みの訴え方や質では主に以下のものが考えられます。

尿路結石 ・若い男性。深夜や早朝に突然強い痛み
腎盂腎炎 ・腎臓の細菌感染症
・高熱と共に重たい痛み
急性胃炎・胃十二指腸潰瘍 ・みぞおち付近の痛み
・背中や体の左側腹部の痛み
・痛みが食事によって変化
急性膵炎 ・食後、左上腹部や背中に突き刺すような痛み
大動脈解離 ・胸や背中が引き裂かれるような激しい痛み
腹部大動脈瘤 ・へそ周囲や腰に突き刺すような痛み
脊椎への癌骨転移 ・日に日に痛みが強くなり、じっとしていても痛い

ポイントは安静時痛、明らかな悪化、ドン引きするほどの強い痛み

 

 

境界層の侵襲

創傷や外傷5種(骨折、脱臼、捻挫、打撲、挫傷)を始めとする、組織損傷を境界層の侵襲と考える。

急性症状(炎症)であれば明確ですが、慢性症状においても境界層のダメージは起きる。

骨膜損傷や筋膜損傷もこのパターン。

 

 

脳の誤認および心理的障壁

痛みの経験、疼痛回避姿勢など局所及び全体においても問題が少ない場合であっても、痛みを訴える場合は自身の体を事実誤認している可能性があります。

「あれだけ痛くて自信が無い」「歩くのが怖い、あれやると痛くなる」など。

 

 

損傷時の力

瞬間的に作用するもの

急性。瞬間的な「力」によって損傷が発生するもの。

ケガや交通事故など。

 

繰り返しや継続して作用するもの

亜急性、反復性、蓄積性。一回で明確な組織損傷には至らない程度のもの。

わずかなダメージが繰り返し、継続して発生することによって蓄積(修復<損壊の状態)によって機能障碍に至る。患者さんのほとんどがこのパターン。

 

同様のダメージがあっても痛みが出る人と出ない人の差は、受傷者個々の身体的特性や状況によって違うため、過去から現在までの蓄積(体のゆがみ、アライメント不良)が影響を及ぼす。

損傷時の力を概念として3つに分ける。

①使い過ぎ:overuse
②使い方の間違い:misuse
③不使用後の急な負荷:disuse

 

一例として

腰痛の場合

①草むしりやり過ぎて腰が痛い→筋疲労性
②無理な姿勢で作業してから腰が痛い→捻じれ、牽引
③急に運動したら腰が痛い

これら全て損傷時のパターンではあるが、その背景として日々の生活ではどんな過ごし方をしたのか?潤滑不全はどのように生まれて動きが加わったのか?

 

好転反応

治療の過程において改善に向かう中で起こる、一時的に悪化した身体反応のことを指す言葉として使われます。

  • 治療を受けた日は何か疲れて夕方寝ちゃうのよね
  • 治療の翌日は痛かったけど、あとは楽になったよ

こういった場面で使われることが多いです。

これが手技療法、運動療法の影響ならば『③不使用後の急な負荷:disuse』ですが、非生理的な施術(PI-t整復や肩甲骨はがしなど)であれば『②使い方の間違い:misuse』とも言える。

どちらにせよ必要な痛みだったのか?予見できる痛みだったのか?が重要で、それを患者さんに事前告知して承認を得られているかが信頼関係の維持構築において重要。